南大阪・泉州地域(泉南市 ・富田林・羽曳野周辺)の老朽化ため池改

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分類:土木資材投稿日:2026-10-10

1. 南大阪・泉州のため池が抱える特有の課題

  1. 築造年代の古さと堤体の脆弱化:

    多くの堤体が「刃金土(はがねづち:粘土)」による均一型・心壁型のアースダム構造ですが、長年の経年劣化、小動物(モグラやザリガニ)の巣穴、樹木の根の腐食孔などにより漏水みち(パイピング経路)が形成されています。

  2. 非かんがい期(冬期)の超短工期:

    春から秋の農業用水使用期間(かんがい期)を避けるため、工事期間は11月下旬〜翌年3月中旬の約3〜4ヶ月間に限定されます。天候不良や冬期の低温下でも確実に施工できる工法が求められます。

  3. 既設取水構造物の複雑さと狭小環境:

    斜樋(しゃひ:斜め取水管)、底樋(そこひ:池底貫通暗渠)、洪水吐き(余水吐コンクリート)など、何十年も前に造られたコンクリート・石積み構造物と堤体が複雑に接合しています。

  4. 良質粘土の確保難と残土処理費用の高騰:

    従来の粘土張付け工法では、基準を満たす良質粘土を遠方から搬入する必要があり、掘削した劣化残土の処分費を含めて工事予算を圧迫していました。

2. 従来工法と「LLDPE遮水シート工法」の比較

比較項目従来の粘土刃金張付け工法一般的なHDPE遮水シートLLDPE遮水シート工法(当工法)
遮水性能施工時の転圧密度や含水比管理に左右される完全不透水完全不透水(透水係数 $\\\\le 10^{-13} \\\\text{ cm/s}$)
堤体変形への追従クラック発生時に漏水・パイピングリスクやや硬質。不同沈下時に突っ張り破断リスク破断伸度800%超。堤体の沈下や変位に追従
複雑形状・役物施工型枠等が必要硬いためコーナー部の折り曲げ・手加工が困難非常に柔軟。斜樋・配管まわりの手元溶接が容易
耐環境応力割れ(ESCR)なし鋭角曲げ部に長期的な応力集中割れリスク極めて割れにくい。曲げ加工部も長期安定
工期・冬期施工性粘土の運搬・敷均し・転圧で長工期、凍結リスク溶接温度管理がシビアシート敷設+熱融着で短工期。冬期溶接マージン大

3. ため池改修における標準施工断面と多層構成

堤体の上流側(水圧を受ける斜面)にシートを敷設し、浸潤線(水が堤体に染み込むライン)を下げて堤体全体のすべり崩壊を防ぎます。

【貯水面(水側)】
  │  ① 保護工:プレキャストコンクリート連節ブロック(波浪・紫外線保護)
  │  ② クッション層:長繊維不織布(目付 300〜400 g/m²)
  │  ③ 遮水層:LLDPE遮水シート(厚さ 1.5mm / 法面部は片面テクスチャー仕様)
  │  ④ 下層保護・ガス水抜き層:長繊維不織布(目付 300 g/m²)
  │  ⑤ 地盤整形面:既設堤体法面(転圧整形・砂クッション敷設)
【既設堤体(土堤側)】


  • 片面テクスチャー仕様の役割:

    法面勾配が1:1.5〜1:2.0前後の急な堤体において、保護ブロックや不織布との界面摩擦角($\\\\phi \\\\ge 26^\\\\circ$以上)を確保し、水位急低下時や地震時の表層すべり落ちを防止します。

  • 天端・基礎のアンカートレンチ定着:

    堤体天端(頂部)および池底基礎部に深さ約50〜60cmのトレンチ(溝)を掘削し、シート端部を巻き込んでコンクリートまたは良質土で埋め戻し、一体的にアンカー固定します。

4. 構造物取り合い部(斜樋・底樋・コンクリート擁壁)の重要ディテール

ため池改修で漏水事故が最も起きやすいのが、「シートと既設コンクリート躯体の接続境界部」です。南大阪の実務現場では以下の納まりが標準化されています。


① コンクリート擁壁・洪水吐きとの接合

  1. 下地処理: 既設コンクリート表面の凹凸・角をサンダーケレンして平滑化し、プライマーを塗布。

  2. 止水パッキン: 耐水・耐アルカリ性のネオプレンゴム(またはEPDMゴム)スポンジパッキン(厚さ5〜10mm×幅50mm)をコンクリートとシートの間に挟み込む。

  3. 金物締結: ステンレス製フラットバー(SUS304、幅50mm×厚さ5mm程度)をあて、オールアンカー(M10〜M12)をピッチ150〜200mm間隔で締め付けて均等に圧着。

  4. 端部シーリング: 金物上部およびボルト頭部に変成シリコーン系またはポリウレタン系シーリング材を充填して二重止水。

② 斜樋(取水管)貫通部の現場成形ブーツ工法

斜樋の丸パイプがシートを貫通する箇所では、既製パーツでは角度が合わないため現場加工が必要です。

  • LLDPEスカートの製作: 柔軟なLLDPEシートを職人が現場で円錐状に切り出し、配管外周にぴったり合う「成形ブーツ(スカート管)」をヒートガンで仮止め。

  • 押出溶接(エクストルーダー): ブーツと主シートの接合部を、HDPE/LLDPE溶接棒を用いたポータブル押出溶接機で連続ビード溶接。

  • ステンレスバンド締め: 配管側には耐食性SUSバンドを2重に巻き付け、ブチルゴム止水テープを挟んで締め込み。

  • LLDPEの優位性: HDPEだと硬くてパイプ外周に沿わせる際に隙間やシワができやすいのに対し、LLDPEはゴムのようにしなやかに密着し、完全な水密性を確保できます。

5. 地震対策(レベル2地震動・南海トラフ対策)としての評価

大阪府が推進する「ため池耐震化事業」において、設計コンサルタントがLLDPEを採用する決定打は以下の2点です

  • 堤体クラック・不同沈下への追従性:

    大地震の揺れによって堤体に亀裂が入ったり、堤体が側方へ数パーセント変形しても、破断伸度800%を超えるLLDPEシートは伸びて持ちこたえ、水が亀裂内に一気に浸入して堤体が決壊(パイピング破堤)する連鎖を食い止めます。

  • 応力割れの回避:

    急勾配の折り曲げ部やアンカー金物付近は常時引張応力がかかり続けますが、LLDPEは耐環境応力割れ(ESCR)が極めて高いため、数十年にわたり脆性亀裂を起こさず、地域の防災機能を維持し続けます。